「高屈折レンズって屈折率が高ければ高い程いいの?」


まず左の画像をご覧下さい。
 今ここに2種類のプリズムを用意するとしましょう。使用されているのは皆様が小中学校の理科で学習された三角プリズムです。左から太陽光を入れて右側に投影すると、7色の帯が表示されているのがわかりますね。
 左のプリズムの画像と下のプリズムの画像とでは僅かに異なっているのがわかりますか。実は上の画像で使用されているプリズムと下の画像で使用されているプリズムの屈折率が異なっています。



 ではどちらが屈折率が高いかと言うと光が分散された時の帯の幅が長い下の画像のプリズムの方なのです。
 この理屈はこれからお話しする上で非常に重要な意味を持っています。
 屈折率が高くなるとこのように分散率が高くなりますので、たとえば光のスペクトルを調べる場合は輝線の位置などが確認しやすいなどのメリットがあります。レンズの場合も屈折率だけでなく分散率のデータは重要で、屈折率が同じでも分散率が異なる素材もあります。
 ただしレンズ系で表示される分散率はその逆数(逆分散率/アッベ数とも呼ぶ)を用いています。光学用語上では屈折率がNで、分散率はギリシャ文字(ν:ニュー)で表されます。


レンズの性能は屈折率のみにあらず


 高屈折レンズは単焦点の場合、屈折率が高ければ高いほどレンズ面の曲率は小さくなるので全体に薄型になりますが、上に示すプリズムの画像のように光の分散は大きくなりますので色収差が増大します。逆分散率は分散率の逆数ですので小さくなります。一般的に球面レンズのメガネレンズにおける実用的な逆分散率は40程度とされていますが、現在の市場では薄さを優先するために30代前半にまで下げたレンズも流通しています。
色収差とはザイデルの5収差の1つで、光の波長により合焦する位置がずれる状態を指します。つまり小学校や中学校の理科の時間に出てきたレンズの光線図は理論上の図であり、実際には単レンズでは左の図のようにレンズの中心付近と周辺ではピントのズレと色のズレが起きているのです。波長の短い光は手前に合焦し、長波長の光は後方に合焦します。ですから強度の遠視用球面レンズのときに影響が出るとされています。
 理論的には高屈折レンズの曲率をできるだけ小さくすれば球面収差は出にくくなるのでずか、アッベ数が小さいためにどうしても球面レンズでは色収差が増加してしまいます。単レンズの球面レンズでは、強度な度数になるほど良像範囲が狭くなってしまいます。


高屈折でも色収差と球面収差を防ぐには


高屈折レンズの屈折率に対するアッベ数 ( HOYA )
屈折率
1.5
1.53
1.6
1.604
1.67
1.7
1.705
1.807
1.892
ガラス
-
-
-
41.2
-
-
41.4
34.4
30.4
プラスチック
58
43
41
-
31
36
-
-
-

短焦点高屈折レンズの球面と非球面の製作状況 ( HOYA )  ■球面 ●非球面
屈折率
1.5
1.53
1.6
1.604
1.67
1.7
1.705
1.807
1.892
ガラス
-
-
-
-
-
プラスチック
■●
■●
■●
-
■●
-
-
-

 仮にこれが球面収差の欠点を改善した非球面レンズと言えども、色収差からは逃れられません。さらにその欠点を補うレンズが両面非球面レンズと呼ばれるものですが、色収差が皆無ではありません。現在プラスチックレンズでは屈折率が最高1.76、ガラスでは1.9にも及ぶレンズが販売されています。前者は非球面で後者は球面レンズのみの製作となります。
 しかしどう考えてもアッベ数が35を切る球面レンズは特にパソコンを見たり精密な作業、長時間の事務作業を行う方にはお勧めしたくありません。色収差が出るレンズの周辺は、レンズの分解能が低いからです。高屈折レンズは薄くて軽い利点もありますが、色収差と周辺のコントラスト低下という欠点も持っているので、ある程度の強い度数の場合は非球面レンズのほうが断然有利です。また、高屈折素材は高密度ですので全般に形状の変形が低屈折素材のレンズよりも少なく、これも見ていて疲れにくい特徴があります。



アッベ数の高いレンズ素材は業界でも渇望されている


 かつて国内シェア第一位のレンズメーカーのセミナーに参加したときに屈折率の可能性について質問したことがありましたが、技術的に製作可能であってもアッベ数の向上が無くては万人向きの製品にならないことを聞きました。今後の研究で優れた素材が見つかれば随時採用したいとも聞きました。ちなみにその国内最大手のメーカーでは現在1.70を実用上の上限としています。

 
屈折率と分散率のバランスの評価は、現在のマイクロプロセッサのクロック・レートとFSB、TDPのバランスの評価に似ています。いずれにしても、メガネ店のチラシの示す屈折率だけでレンズの性能は語れません。レンズのカーブ設計と屈折率、分散率のバランスが重要です。 ところが技術程度の低いところに限って1.74とか1.76もの高屈折レンズをやみくもに販売したがるのはどうかと思います。メガネレンズは度数も屈折率もアッベ数もMTFも全てトータルバランスで決めなくてはなりません。ここまでお読みになれば、屈折率だけが高ければいいものでないことがおわかりでしょう。


ガラスの高屈折レンズはなぜ少ないか


眼鏡用高屈折ガラスレンズ製造が大企業からフェードアウトしつつあります。
その理由は...
  1. 大メーカーがAs、Pb含有の素材を扱えなくなっている。
  2. 原材料調達コストや産廃処理コストの急激な増加。
  3. UVやブルーライト領域の遮断特性が劣っている。
  4. 非球面タイプが大メーカーで製造されていない。
  5. 自動車のエアバック等衝撃に対するリスクが著しく高い。
などが挙げられます。

 
ガラスレンズの減少傾向はかなり以前からあったことですが、ここに来て加速しているようです。しかも近年の産業廃棄物処理法の観点やISO認証取得というバックヤードの問題で、巨大企業がガラスレンズ減少に拍車をかけています。
 実は高屈折ガラス素材に含有するAs(砒素)やPb(鉛)の処理でISO認証取得がむずかしくなり、アンチ砒素レンズの開発と産廃物の処理や処理施設の増設、国や地方自治体の許認可などなど問題が山積みだからです。販売数量に対する製造コストの著しい増加や原材料の高騰など採算性が問題となっていることも一因です。(現在は高屈折の眼鏡用ガラスレンズは砒素を含まない製造方法が確立されており、ISO認証を得ているメーカーの製品はひとまず安心です。)


 ガラスの高屈折にこだわる方もいらっしゃいますが、ガラスで高屈折で非球面のレンズが巨大メーカーで流通していない現状では本当にガラスのほうが光学的にプラスチック素材を上回っているとは言えません。またプラスチックレンズの高屈折素材のほとんどに紫外線100%カットの対策がされていますが、ガラス製品はまったく対策されていません。当然ながらブルーライトを含む短波長光減光に対応したものが信頼の置ける国内一流メーカーから全く販売されていないことも事実です。

 もしプラスチックレンズをご使用できない環境で生活しているようなことがなければ、プラスチックの高屈折素材をお勧めします。特にエアバッグの作動する車を運転する方は間違いなくプラスチックレンズをご使用ください。


高屈折のガラス素材とプラスチック素材の比較
素材
非球面
硬さ
耐熱
重さ
加工性
紫外線
衝撃
ガラス
×
×
×
×
×
プラスチック
×

非球面レンズの詳細は別の項目で説明します。下の項目をクリックしてください。


 
非球面レンズ最新情報ページ
 
色の変わる調光レンズ最新情報ページ


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